のんべえ手帖

のんべえの日常を綴った日記

「夏子の酒」をあたまから読み始めている

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言わずと知れた有名日本酒漫画「夏子の酒」。酒は飲んで楽しむものであって、読むものではない、とか言い訳にして、人生で一度も読んだことがなかったのだけど、このたび巡り巡って全巻お借りする機会に恵まれた。「夏子の酒」を知らずに終わる人生より、知って終わる人生の方がいいかもしれない。お借りして読むことにした。いや、正直言うと、めっちゃ読んでみたかった。

主人公の夏子が「亀の尾」モデルの幻の米を苦労の末、復活させて美味しいお酒を造る、というストーリー。で、そのモデルになったのが、久須美酒造さんだったか。

そういう情報はさておき、夏子の酒……めっちゃおもしろいです。そりゃあ、読み継がれる漫画だよね。日本酒漫画の金字塔だった。

セリフ読み飛ばして暴読みする自分が、一巻一巻涙しながら、セリフを噛み締めつつゆっくり味わうように読んだ。

その頃の時代のお酒業界の状況、農家の心情も田舎特有の空気感なんかもすごくリアルに描かれている。めっちゃ取材されたか、または、育った場所が同じような環境だったかしないと描けないように思った。

夏子が田舎→東京→田舎なのも、視点が広くなってていい。

1巻の夏子は、ふるさと新潟をでて東京の広告代理店でコピーライターの職につく。で、大手酒蔵の広告を手掛けることになった。とても美味しいと思えないお酒だったけど、美味しくて美味しくてしょうがない、みたいなコピーを書かなければいけなくなって悩む。クライアントの酒蔵は醸造アルコールを添加していることをはっきり言ってほしくないけど、本醸造は売りたいみたいな微妙な感じ。

特定名称酒である本醸造はアル添だけど、アル添して純米にはできない味わいを出しているんだって、きちんと事実を消費者に伝えた方がいいという夏子に対して、代理店の先輩ディレクターも大反対だし、結局は担当を外される始末。

作者の尾瀬あきらさんが執筆をはじめたのが、1988年頃。第一巻の初版は、1988年12月発行だった。1990年に級別制度がなくなったとか歴史を考えると、酒を一級酒二級酒で酒を語れなくなってきた過渡期みたいな頃なんだろうな。やっと特定名称酒がでてきたけど、消費者がよく分かってなくてモヤモヤしているような時期か。なにはともあれ、まだ三増酒の影響でアル添=悪い酒が強く根付いていた時代のようだ。

そんな諸々も含め、お兄さんの意思を継いで、憧れだった職業を辞めるにいたったいきさつとか、人間ドラマと酒業界、いろいろ絡んでいておもしろい。

でもって、一番好きなのは、幻の酒米を復活させるために、有機栽培の米作りに協力してくれる農家のおじさんが言ったセリフ。

「酒が芸術かどうかなんてわしは知らんがね……吟醸ってのはとびきりの美人に膝枕してもらってる気分だなぁ……」

ふむふむ。尾瀬さん。吟醸ってのは、そういう味なのですね。

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本日の晩酌酒。レトロラベルがいい感じ!

まだ全巻読めてないけど、めちゃ楽しみ。

 

酒量:日本酒1合