群馬県の館林にある清水屋酒造さんに、酒蔵見学のために訪れた。いにしえ酒店の店長に「今度行くけど、行く?」と雑に誘われたのを思い出し、せっかくだから連れていってもらった。月曜日の朝9時頃、魑魅魍魎みたいな名前の特急に乗って、うちから、1時間半。思ったよりは近かった。
清水屋さんは、1873(明治6)年創業。25年間酒造りを休んでいたが、現社長である6代目の渡邉昌宏さんが蔵に戻って、2010年に酒造りを再開した。
渡邉さんは、酒販店やシャンパン会社のヴーヴ・クリコ ジャパンで働いて、営業や流通、マーケティングの考え方などなど、いろいろ学んでから蔵へ戻ったそう。若々しくて、フレッシュ感あふれるし、とってもイケメンなのだけど、なぜか顔出しはNG。
そんな社長の理想を形にした「SAKAEMASU」は、おしゃれなラベル、ワインボトルにコルク栓、ヴィンテージを想定した造りなど、いろいろ変わってておもしろい。
2010年の造りにあわせて建て直したという蔵内は、とってもコンパクト。今まで見た酒蔵の中でナンバーワンで、コンパクトかもしれない。この実験室みたいな広さが、なんだかすごくいい。ほしい。
造りは年間50石くらい。今、1クールで、2クールが終わる年末か年明け頃にはもう甑倒し。日本でナンバーワンに甑倒しが早いかもしれない。いろいろ聞いているとプレミアム感が高まる。
清水屋さんのこだわりでおもしろいなーと思ったのは、酒米がすべて五百万石で造っているところ。新潟産と群馬産の2つを使いわけている。
群馬で五百万石造ってたんだ!っていう驚きと、なぜ五百万石?という疑問が浮かぶ。
群馬は夏すごい暑くなるので、稲もすぐに大きくなるらしい。群馬産の五百万石は、早稲中の早稲ってことだ。米については、群馬県産という部分にもこだわりたいようだ。今も若い農家さんとかとタッグを組んでよい五百万石を育ててもらおうとがんばっている。
五百万石だけを使う理由は、先代が残したレシピに沿って造っているからだそう。「じっちゃんの名にかけて!」 ということだ。
その昔、新潟に住んでいた初代が、理想の酒造りに合う水を求めて群馬の地まで来たのだそう。館林には、ミネラル豊富な中硬水が尾瀬から流れてくる。「これは良い水だ! 清水や〜」と感激して、社名も清水屋酒造になったとか。なんでも勢いって大事。
残念ながら、震災によって2011年以降は井戸が枯れてしまって以来、浄水した水を使っている。
あ、そうだ、五百万石の話。先代が、新潟出身だったから、五百万石がきっと身近だったんだろうと推測できる。で、渡邊さんいわく、五百万石は、「あなたの色に染めて!」っていう純真無垢な少女、つまりは真っ白なキャンバスのようなお米なんだそうだ。今後の熟成具合に、五百万石のポテンシャルを期待したい!
2013年は、ちょうど味がのってきて評判がいいらしい。さらに、昨日封開けしたものと封開けして一週間たったものを飲み比べ。一週間たったものの方が、甘みや旨味がのってきて美味しい。
それにしても、いにしえで飲んだときは、「うすい」という失礼な感想だったのに、ここで飲んだら2016年ものでさえ、しっかりと味がでている。そうだっけか。記憶が曖昧。たぶん、すごく熟成感を期待して飲んだからだと思う。
「SAKAEMASU」は、精米歩合55%の純米酒と50%の純米吟醸酒の2タイプ(2014年だけ、45%削った純米大吟醸も造った)。ちなみに、2017年が抜けているのは、トランプ政権の影響で諸々あって、造りを休んで1年間営業をがんばっていたのだそうだ。世界の政治情勢は無視できないところに来ているのを感じた。
で、今年から、ラベルを一新して、数字でスペックを表現するとのこと。純米酒→55、純米吟醸酒→50といったように、特定名称の表記をやめるのだとか。横山五十みたいなやつだ。特定名称酒の意味が崩壊してる。そろそろなくなるのかもしれない。
あともうひとつの大きな試みとしては、ラベルの原材料の項目に乳酸と酵母の記載も入れると宣言されていたこと。まだ見たことないけど、他の蔵ではあるのかな? 本当に入れちゃうのかな。なんだか波乱が起きそうな予感。
イメージと言えない事実とデマと勘違い…が渦巻く日本酒の世界。右向け右はできないから、独自でやれるところまでやる。そんな風が吹いているような気がした。どんな風だ?
オゼノユキドケビールなんかもつくってる龍神酒造さんを眺めながら帰った。
館林は製粉が有名のよう。帰りに食べたうどん美味しかった!
酒量:日本酒1合