のんべえ手帖

のんべえの日常を綴った日記

稲里を造る「磯蔵酒造」の蔵見学へ

酒蔵ツアーのお誘いをいただき、遠足気分で茨城県笠間市までいってきました。

上野から快速ラビット小山駅まで約1時間、さらに水戸線に乗り換えて稲田駅へ。約2時間ほどで到着です。

「磯蔵酒造」は稲田駅から近く、駅から大きなお屋敷が見えます。

帰りに撮った写真。

堂々とした門構え。

丸窓から中が覗けます。

 

浅草にあった直売所「日本酒文化専門店 窖」を2023年1月に閉じた代わりに、蔵に隣接する見学施設を4月に改装オープンされたそうです。

オーセンティックバーのような厳かな雰囲気の滋酒バー(要予約)や角打ちできる販売所、ギャラリーなどなど。門の中もすごく素敵でした! 

詳しくはこちら。写真とともにコンセプトが熱く言語化されております。

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蔵見学は有料ですが、蔵元の磯さんに解説をしていただきながら、がっつり試飲もできる極上案内2,000円(所要時間90〜120分)に参加しました。

通常案内は、1,000円(所要時間60〜90分)。

isokura.jp

稲里といえば、創作筆文字のラベルがとても印象的でしたが、書のような絵は、作家の方の作品だそうです。とても力強くかっこいいです。

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極上見学コースは、最初から最後まで磯さんの話術により、笑いっぱなしでした。

いじわるクイズ出します、と宣言されていましたが、本当にあらゆる場所で質問されました。

酒林(杉玉)は、なんのためにあるのか?

よく言われるのが「新酒を絞ったお知らせ」なのですが、もともとは「杉には殺菌作用があるため使われるようになった」のだそうです。

実は、前日に「せっかく行くから…」とネットでいろいろ検索していたら、前に見学へ行った方のブログを見てしまって、答えを知っておりました。

「この問題を当てた人は、30年やってて初めてだ!」と驚かれてしまって、完全に言いそびれてしまいましたが、私の正解はカンニングによるものです。

 

磯蔵酒造のお酒は、すべて茨城県内のお米で造られています。

山田錦も五百万石も茨城産。しかもほとんどが笠間産。

地元のお米を使うと、農家の方がお酒を飲んでくれるし広めてくれる、さらに理想の米をつくってもらえる、輸送も安いなどいいこと尽くめだそう。

思ったより多くのお米が茨城でつくられていた事に驚きました。


蔵内には、色の画があり印象的でした。黄色は米、赤は蔵人さんの部屋。

青は水エリア。なんだかよく分からないパワーを発しています。

 

稲田は"稲田石"という御影石の産地で、日本最大の石切場、石切山脈があります。

稲田駅から磯蔵酒造と逆方向に徒歩20分。

 

蔵に行く前に石切山脈も見学にいってきましたが、稲田石は白くてキラキラしてとてもきれいで、石好きにはたまらないです。キラキラと輝くのは石英が多いからだそう。

蔵の地下もこの稲田石がつながっていて、この石が水分中の鉄分をろ過してくれるので、酒造りによい水質になるとのこと。
"石透水"とよばれる、この水を仕込み水として使っているそうです。

近辺の川や田んぼの用水路も、水がすごく澄んでいました。

 

限定吸水、お米を蒸す釜、醪タンク、貯蔵タンクなどひととおり見せていただきました。磯蔵酒造の蔵人は、役割ローテーション型ではなく、釜、、麹など、ひとつの持ち場で専門家を育てる、というスタイルだそうです。

醪から「お腹へった!」とか「喉がかわいた!」という声が聞こえてくる、とおっしゃっていたのも印象的でした(聞こえるようになるまで5年以上かかるとのこと)

大事なのは、どれだけお酒のそばにいるか、ということ。言葉のわからない赤ちゃんでもずっと様子を見ている母親なら、何を言っているか分かるということと同じ、と磯さん。

酒造りは機械化せず、やれるところはほぼ手造り。麹も蔵人がつきっきりで見守る形をとっているそうです。


滋酒バーにもどり、稲里のラインナップを試飲させていただきました。

笠間焼きのおちょこが味わい深い。特徴はあまりなく、自由なスタイルが持ち味だそう。ぜんぶ違う器でいただきました。


稲里は、蔵元いわく「ライシィ」な味わいを目指してつくられたお酒。
※お米の味わいを磯蔵さんではライシィと定義しているそうです。(Ricy? お米っぽい、お米の甘み)
香りは、カプロン酸エチル的なフルーティさではなく、ほんのりやさしいイソの香り。香りはほんとうにおだやか。食事に寄り添う系。

どのお酒も穏やかで口当たりのよさがあります。定番の「山」は、旨味や酸味がバランスよくまとまり、水の透明感も感じられました(石透水を意識しすぎたかもしれませんが)。

三日月のようにキレのよい「月」、燗でも冷でもおいしい楽しみ方自由な「雲」など、ラベルは、目指す味のコンセプトが表現されているそうです。

純米大吟醸スペックの「月」はお寿司に合わせたものだそうで、飲んでいたら本当にお寿司食べたくなりました。お腹が減っていたかもしれません。ともかく稲里は、食事と合わせて完成するタイプのお酒だと実感。和食のお出汁とも良さそう。滋酒バーの”滋酒”が、ぴったりハマるな、と思いながら飲みました。お米を噛みしめたような滋味深い味わい。

 

いろいろお話して気づいたら時間オーバー。申し訳なかったけど、試飲しながらじっくり話せる極上コースはほんとに極上でした。

お酒が買える場所でも無料試飲ができましたが、こちらには、蔵元の娘さんがいて試飲していると炭酸で割ったりライムをかけてくれたり、いろんな飲み方で楽しませていただきました。弟さんも酒造りに加わっているそうです。頼もしい。

 

なかなか来ることのない町に行けるのも、酒蔵見学のよいところです。

今年のしぼりたて生原酒と、しぼったまんまの純米酒「山」を購入。家で何か和のつまみと合わせたい。

ずっと天気が崩れていたけど、この日だけ晴れていたのも奇跡でした。

 

酒量:日本酒1合